sbs3月9日放送「シリーズ東日本大震災から5年」~津波に備えて庁舎はどうする~

下田市のケース

建設から半世紀以上経過している下田市庁舎は海から約1km,海抜2.5mの場所にあります。前市長は候補地として海抜50m以上の高台を選定しました。しかし現市長は津波想定域から少し外れた、海抜7mの場所への移転を打ち出しました。

 

この問題をめぐって市政は停滞。3ヶ月後の市長選では大きな争点となることが予想されています。


岩手県大槌町のケース

発災当時、役場には60名の職員がいました。津波に襲われたのは、屋外で災害対策本部の設置を行っていた時。屋上へと避難しましたが、2階部分まで到達した津波により、町長はじめ40名の職員が命を落としました。

「町長はじめ多くの職員が流され沈んでいく姿を目の当たりにした」と話す現町長。「6.4mの防潮堤があって、ある程度防御できるだろうと言う過信があった気がする」と語ります。

町長の不在、職員の不足、そして資料の喪失。「住民基本台帳がないことで死亡届の受理ができず、遺体の火葬・埋葬ができない。」

 

町民からかけられた言葉が今も忘れられない。「なんで役場の人間が死ぬんだ。」「何はともあれ役場の人間には生きて欲しかった。」「自分たちが困ったときに頼りになるのは自治体職員だ。」


焼津市のケース

47年前に建てられた焼津市役所の建て替え地は、幾つかの候補地から現在地が選ばれました。

 

焼津市長の選択は「海から約350m、海抜2.2m」の場所

市民説明会では「街づくり、事業費、防災面および利便性の観点から、総合的に判断して、現在地が最適と判断」と説明。

県がまとめた被害想定では、レベル2の地震が発生した場合に、現地は最大1.6mの津波が浸水するとされています。

 

「L1の対策をすればL2まで、浸水域でなくなると報告を受けている」と話す市長。

 

県が計画している焼津漁港の防潮堤の整備が完了し、それらが完全に機能すれば、浸水はないと県では試算しています。

しかし静岡大学の北村教授の焼津市内でのボーリング調査では、過去の地震で海岸線の後退(海底地すべり)が発生した痕跡が見つかっています。

 

海底地すべりが発生することで、津波が予想より高くなる恐れもあると報告されています。

現在地での建て替えに不安を訴える住民の中から、建設地見直しを訴える署名活動も始まりました。

 

「地震や津波は科学で測れるものではないし、人間が作った防潮堤も絶対に大丈夫というわけではない。あえてリスクのある場所に建てる必要はないのではないか?」


「現時点での知見をしっかり精査することが我々に出来ること」

「これから30年後、知見が固まってくるかもしれません」

「それはその時代で考えるべき」