4月3日放送 nhkスペシャル 巨大災害

【地震列島 見えてきた新たなリスク】

東北大学 地震・噴火予知研究観測センター 日野亮太教授。

 

いま注目しているのは、東北地方の異常な地盤の動き。「我々の想定していない別のタイプの地震が起こる」地震発生から1年後から、海底の観測点の動きが東から西へ反転。思い描いていたことと違うデータが次々現れる。

 

異常の原因は地下奥深く、マントルに起因しているのではないかと考え始めた。

 

「粘弾性」と言われる大きな力が加わった後、時間をかけてゆっくり変形が起こる現象。マントルはプレートの動きについていけず、5年たった今もその変動が起こっている。今回の地震があまりにも大きかったため、それが顕在化しているのでは。

 

粘弾性を考慮したコンピュータ・シミュレーションでは現実の変動と一致。歪のたまる本州内陸部と沖合で新たな地震が起こる懸念がある。 地球全体に対して大きなインパクトを与えたと考えられる。

これまで活断層の調査が全国で行われてきたが、活断層がない地点の地震が相次いでいる。

中越地震、岩手・宮城内陸地震・・・活断層だけの予測には限界がある。

 

現在注目されているのがGPS観測。僅かな大地の動きを捉える。去年10月に起こった山陰地方での連続した地震。これも活断層が確認されていない地域。ここに注目しているのは京都大学防災研究所の西村卓也准教授。山陰地方で今後、大きな地震が起きるのではないか?歪が集中しているのではないか?と危惧している。

 

GPSデータと過去15年間の震源を重ねあわせると、1枚の壁にように連なる地盤の割れ目が浮かび上がる。ここに大きな地震のリスクがあるとかんがえられる。

 

他にも地盤の割れ目がないか調査すると、同じプレートの上でも地盤の動きは様々であることが分かる。これまで一つと考えられてきたプレートが複数のブロックに分断されている可能性がある。

 

それを証明するように、ブロックの境目には大きな地震の痕跡が確認される。120年前の濃尾地震。阪神・淡路大震災で動いた活断層。

 

これまで調査が進められてきた地表だけでなく、地下深くまでプレートが割れている。

「活断層がないから安全だとは言い切れない。」

3月9日のM7地震の解析をできずに後悔しているというのは、海洋研究開発機構・地震津波予知研究グループの堀高峰グループリーダー。「事前に何も発信できなかったことが、一番大きなショックだった。」

 

南海トラフでも同様の現象が起きるのではないか。九州の南東、日向灘。数十年ごとにM7クラスの地震が発生。この地震が巨大地震を誘発するのではないかと考える。

通常150年周期の南海トラフ地震が、日向灘地震によって誘発され、短い間隔で発生する可能性がある。シミュレーションでは日向灘地震の4年後、南海トラフでM8.3の巨大地震が。更に1年後M8.1の巨大地震がその東側でも発生。150年の間隔が、半分になる可能性もある。「多様性をしっかり検討する必要がある。」復興から立ち直る前に、再び被害を受ける可能性も。

「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」

研究者たちはこれまでの考え方を根本から見直し始めている。あらゆる可能性を排除せずに次の地震に備えなければならないと考える。

 

東京大学・古村孝志教授「研究や努力をすればはっきり分かる面と、自然界の複雑さで分からない面。この両方があることがわかってきた。これを認識したうえで対策を知っかりとることが重要。」